わたしの魔法使い
会長にはすべてを話したよ。

“会長から話してほしい”ってお願いしたから。

でも、それは断られちゃった。


朱里。これが君に隠していたすべてです。

隠していて本当にごめんね。

こんな僕を好きになってくれてありがとう。

でもね、やっぱり僕は、誰かと恋をしちゃいけないんだよ。傷つけるだけだから。


もう誰も傷つけたくない。朱里の事も。

だから、僕はもう消えるね。


魔法使いは必要ないでしょ?

あの日、僕に魔法をかけてくれてありがとう。』




颯太の手紙はそう締められていた。


「…――何ですか?これは……」


やっと絞り出した声は、涙声だった。

傷つけたくない。

それは颯太の理屈だよ。

私は傷ついても一緒にいたいよ。


「こんな別れ方、嫌だよ……」


日が沈んだ部屋に、私の泣き声だけが響いていた。




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