わたしの魔法使い
私の中の颯太を消そうとするかのように、田中さんはメールや電話を毎日のようにくれた。

時間の許す限り会いにも来てくれた。

でも、私の中の颯太はなかなか消えなくて、よりいっそう鮮やかな記憶として、はっきりと心に染み付いていった。



田中さんが電話をくれる度に颯太の声を思い出し、メールをもらう度にあの手紙を読み直してしまう。

そんな自分が嫌だった。


忘れなきゃ。

田中さんとちゃんと向き合わなきゃ。

そう思う度に心が締め付けられる。

田中さんの笑顔を見るたびに、颯太の左頬にできるえくぼを思い出す。

颯太に会いたい。

そんなことばかり考えていた。




「…――朱里ちゃん。いい加減僕を見てよ……」


そう言われたのは、あの告白からちょうど1年が経った頃だった。

そう言った田中さんの横顔は、初めて見る、傷ついた笑顔だった。



「ちゃんと田中さんを見てますよ……」


そう答えたけど、田中さんの表情は傷ついた笑顔のままで、それ以上何も言えなかった。

部屋に差し込む春の陽が田中さんの顔を照らす。

うっすらと髭の伸びた疲れた顔。

色気すら漂うその顔が近づいてきた。



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