わたしの魔法使い
そんなことは考えたくない。

でも、覚悟しておかなきゃいけないこと。

いつか、本当に独りになることを……


その時、ほんの一瞬だけ強い風が吹いた。

その風に驚くように、ゴン太は顔をあげ、私を見つめる。

その顔は“大丈夫”と言っているようで、嬉しかった。



「部屋に帰ろう」


そうゴン太に声をかけて中にはいると、テーブルの上の紙に気がついた。

「そういえば、田中さんが何か置いていったっけ……」


紙を広げてみると、そこには住所と“行ってごらん”と書いてあった。


「行ってごらん…って…どこよ?ここ……」


インターネットで調べてみると、隣町の住所だった。

田中さんに聞ければ一番良いんだけど、あんな別れ方をしたら、直接聞くこともできない。


「…どうしたらいい?」


その紙を持ったまま、しばらくの間考え込むしかなかった……



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