わたしの魔法使い
忘れたくても忘れられなくて、会いたくても会えない。

そう思っていた朱里が、目の前にいる。


「あ……あか……り………?」


朱里がいる。

僕の目の前に、朱里がいる。


……と思ったとたん、くるりと向きを変えた朱里が走り出した。


「え?何で?」


僕から逃げるように走る後ろ姿を、僕は追いかけることができなかった。

ただ、何で朱里がここにいるのか。そればかりを考えていた。



「…――颯太くん!彼女、知り合いでしょ?追いかけなくていいの?」


朱里の背を押していたお客さんが、怖いほど真剣な表情で僕に迫る。

この人、いつもニコニコしるのに…


「彼女、泣いてたわよ!あなたの顔見て、泣いてたの!」


その言葉を聞き終わらないうちに、僕は店を飛び出した。

やっぱり会いたかったから。

田中さんと付き合っていても関係ない。

僕が朱里を好きだから。

朱里がどうやってここを知ったかはわからない。

だけど、住所だけを持ってここを探しに来てくれた。

それは紛れもない事実。

だから、僕は朱里を追いかけた。

店も、お客さんもそのままで……



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