わたしの魔法使い
「…――僕にはあんな過去があって…朱里を好きでいちゃいけないって思ってた…僕といても幸せになれないって……」

「バカじゃないの!!」


思わず言い返してしまった。

ほんと、バカ!

過去なんてどうでもいいのに。

堪えていた涙がまた溢れ出す。



「あのね!幸せかどうかは私が決めるの!颯太が決めることじゃない!」


ビクッと颯太の肩が震える。

当たり前のことなのに……

幸せなんて、誰かが決めることじゃない。

それに、誰かに幸せに“してもらう”ものじゃない。

幸せは自分で“掴みとるもの”だって、私はそう思ってるから。


「ほんと……バカ!!」



何回“バカ”って言ったんだろう?

たぶん、こんなに“バカ”って連呼したこと、なかったと思う。

…私って、こんなに口、悪かったのかな?



それでもまだ颯太は納得しなかったようで、グズグスと続ける。


「…――朱里。こんな僕でも……」

「私は颯太が好き。過去も全部颯太だから。」

「……ありがとう」


ありがとうって……

そんな潤んだ目で笑わないでよ。

もっと好きになっちゃうよ。

そんな私の気持ちに気づいたのか、颯太が優しく、でもさっきよりも強く抱き締めてくれた。

そして耳元で


「朱里。僕も朱里が好きだ……」


そう言ってくれた。

甘く、囁くような声で……



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