わたしの魔法使い
キス、されるんだって思った。

いつものように、優しく触れるだけのキス。

でも、待っていたのは、甘く、深い…大人のキスだった。



颯太の舌が、ゆっくりと入ってくる。

遠慮がちに、でも明確な目的を持った別の生き物のように、私の中を動き回る。

とても不思議な感覚。


キスって、こんなに気持ちいいんだ……

自分がアイスクリームになったみたい…

気持ちよくて……

溶けちゃいそう……



でも、戸惑ってる自分もいる。

こんなキス、初めてだから……


息ができない……

でも、やめてほしくない……


そんな私に気づいたのか、ゆっくりと唇が離れる。

颯太の瞳が私を捕らえて離さない。

じっと見つめる目が熱い。

そのままゆっくりとベッドに倒されると、またキスが降りてきた。

最初は唇に、次は瞼に……

ゆっくりと、私の気持ちを確かめるように落ちるキスは次第に熱を帯びていく。

自分の声が、自分のものとは思えないほど甘く、官能的なものに変わっていく。


「…そ…うた……」

「…愛してる……朱里……」


離れていた時間を埋めるように、何度も“愛してる”と耳元で囁かれる。

それがくすぐったくて、嬉しかった。



私たちはその日、春の日差しが差し込む部屋で、初めて結ばれた。



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