わたしの魔法使い
心地よい疲れの中、私は夢を見た。



颯太にそっくりな男の子が、私に向かって手を差し出している。

まだ歩き始めたばかりだろう。

覚束ない足取りで、一生懸命に歩いている。

その後ろを優しく微笑みながら歩く颯太がいた。


男の子が私を呼ぶ。

「ママ」と……




微睡みから覚め、ゆっくりと目を開けると、夢の中と同じように優しく微笑む颯太の顔があった。


きっといつか……

そう遠くない、いつか……


夢はきっと現実になる。

そんな気がした。



「…――朱里…愛してる」

「私も……」



経験のない私が書き続けたお話は、今現実になって私の前に現れた。

でもね、きっと書き続けたお話の中の“彼女たち”より、幸せだと思う。

だって“彼女たち”は、経験のない私が産み出したものだから……



きっと、これからもっと幸せなお話が書ける。

颯太と一緒にいるから、きっと書ける。


いつか、颯太との事も書く気がする。

だけど、もったいないって気もする。

二人だけの、大切な思い出にしておきたい。

そう思う自分もいる。



「…また百面相してる。そんなことしてると……」


颯太の優しいキスが、私の唇を塞いだ。



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