わたしの魔法使い
いつものケンカとは違う。

お互いを理解するためのケンカではなく、いたずらに傷つけ合う。

そんなケンカは初めてだった。



「颯太は嫉妬してるの?私が田中さんと会ってたこと」


……図星。

何もなかったとはいえ、1年近く付き合った人と二人きりで食事に行かれれば、嫉妬ぐらいする。


それが悪いか!


「嫉妬してるんだー!田中さんとはなんにもないのに!」

「嫉妬しちゃいけないか?たとえ何もなくても、元カレだぞ!」

「元カレ?!じゃあ颯太はどうなのよ!」

「僕?」

「そう!颯太は過去にたくさんの女の人と関係があったでしょ?その人たちのこと、何でもないって思ってるって!そう思ってるの?」

「っ…………」


何も言い返せなかった。

過去のことを言われるとは思ってなかった。

お互いに、その事について話すのは避けていたから……

だけど、朱里がそんな風に思っていたなんて知らなかった。


ずいぶんと……痛いところを突かれたな……


朱里がそんな風に思ってたなんて……


やっぱり僕は……


「……ごめん」

「………食べたの、流しに入れておいて。僕、行くから………」


僕は朱里から逃げるように家を出た。




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