わたしの魔法使い
「ほらっ!目、逸らした。何かあったでしょ?話したら楽になることもあるわよ?解決策も見つかるかもしれないし」


そう言って落合さんは笑った。


子供の頃……

奏さんもこうやって笑ってくれたな……

僕がなにかに悩むと、必ず……

奏さんが笑ってくれると、何でもないことみたいに感じたっけ……



僕は、目の前で笑ってくれる落合さんに、記憶に残る優しかった頃の奏さんを重ねてた。


落合さんに話したら、楽になるのかな?



「…――じゃあ、あとで聞いてもらえますか?」

「いいわよ!それじゃあ、あとでね」



詳しいことは話せない。

だけど、話せることだけでも話そう。

そう思ったら、少しだけ気持ちが楽になった。


嫉妬なんて……しなければよかった……

今さら後悔しても遅いんだけど……

朱里……



重い足を引きずるように、店へ向かった。




< 293 / 303 >

この作品をシェア

pagetop