わたしの魔法使い
いつものように掃除を済ませ、看板を外に出す。

いつもならすぐに済むようなことでも、今日は時間がかかる。

できるだけ朱里のことを考えないように……

そう意識すればするほど、朱里の笑顔を思い出す。



「は~………」


看板に凭れるようにため息をつくと、落合さんがにこやかに声をかけてきた。



「またため息ついてる。幸せ、逃げちゃうわよ!」

「…早い……ですね」

「何だか気になっちゃってね。いつも明るい颯太くんが元気ないのって」


何だか……涙が出そうだよ……

こんな僕を気にかけてくれて、心配してくれる。

それが嬉しくて、こそばゆい。


「まだ準備中ですけど…」


そう言って、落合さんを店に招き入れた。




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