わたしの魔法使い
恨むことしかできなかった。

だけど、今は少しだけ、ほんの少しだけ、自分の過去を受け入れられる。

“あれも僕なんだ”って。


そう思わせてくれたのは、朱里や会長、落合さんたちで……

その感謝も込めて、朱里と幸せになりたい。



「…――落合さん。今日、このまま店閉めてもいいですか?」

「いいも悪いも……ここは颯太くんのお店でしょ?」
「そうですけど……でも……」

「早く帰りなさい!朱里ちゃんにちゃんと言うのよ!」


落合さんは笑って店を出ていった。

もう一度、僕の手をギュッと握って……




僕は急いで看板をしまうと、店の鍵を閉めた。

朱里が待つ部屋へ、1秒でも早く帰りたい。

きっと泣いてるだろう朱里を、少しでも早く抱き締めたくて。

それに……


“幸せになりましょう”


そう伝えたくて……



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