わたしの魔法使い
女の人は基本的に食べるのが遅い。

もちろん私も遅い。

特においしいご飯は遅くなる。

時間をかけて、ゆっくり味わいたいんだもん。

まあ、1時間もかける訳じゃないけど……


だから、颯太さんに呼び掛けられたときも、まだ鮭の身をほぐしていた。


「昨日も話したけど、やっぱり僕、寝袋で寝るよ。」

そう。

昨日も同じことを言われた。

同居のルールとして、家事全般は颯太さんの担当、ゴン太に関することは私が担当。

それと、ベッドは私が使って、颯太さんのは布団を用意する。

そう決めたはずなのに…


「ほらっ、ずっとここにいるわけにいかないでしょ?彼氏ができるかもしれないし。」


昨日も同じこと言ってた。

「彼氏ができたら困るでしょ?」って。


それはわかってる。

いつまでも一緒に入られないことぐらい…

だけど……

だけど、それを颯太さんから言われると、胸が痛い。

キュッと摘ままれたみたいに痛くなる。

何でだろう?


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