わたしの魔法使い
誰も見えない部屋の中でよかった……

マヌケどころか、変な人でしょ?!


買い物に行こうって言ってたのに、やってることはお互いの頬を挟んで睨みあったり、ゴン太に手を噛まれたり……


颯太さんが来てから、変なことばっかりしてる。


でも。

颯太さんに会わなければ、私はきっとこんな風に笑わなかったと思う。

いつまで続くかわからない逃亡生活の中で、いつか笑うことを忘れてしまったかもしれない。



ふと顔をあげると、颯太さんが微笑んでいた。

茶色い髪と茶色い瞳、左頬には小さいえくぼ。

その目がとても優しくて……



そんな私の思いに気づいたのか、颯太さんの白くて大きな手が私の頭に乗せられる。


「そろそろ行こうか?」

「うんっ!」



私たちは出掛ける準備を始めた。


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