わたしの魔法使い
お互いに出掛ける準備と言っても大したことはなく、あっという間に準備は終わってしまった。

だけど……


「……朱里ちゃん、鞄とか持たないの?」

「へ?持たないよー」

「普通、女の子は持つでしょ?」

「うーん……そうかもしれないけど、私は要らない」

「……」



そう。私は極端に荷物を持つことを嫌い、ポケットに入れてしまう。

今もジーンズのポケットに財布を入れただけ。

子供の頃からそうだったから、あんまり気にしてなかったけど……変?

だって、必要ないでしょ?

財布と鍵、それとハンカチくらいだし。


きちんとしたところに出掛けるときは、ちゃんと持つよ。

だけど、買い物の時は身軽が一番!


「……まあ、それでいいなら、いいかっ」


そう言うと、颯太さんもお財布をポケットにしまう。


でもね。

颯太さんにそんな風に言われちゃうと、ちょっと気になったりするんだよね。

そんなに変かな?鞄持たないこと……

女の子にはよく言われたけど、あんまり気にしたことなかった。

やっぱり変なの?




――って言うか!

今まで気にしなかったことを颯太さんに言われて、それを気にする私ってどうなの?!




なんだか恋する乙女って感じじゃない?!




…――うっそー!


こ、恋なんて…恋なんてしてないもんっ!


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