わたしの魔法使い
「置いて行くよー!」


顔をあげると、少し先を歩く朱里ちゃんが目に入った。

茶色い髪が風に揺れる、凛とした後ろ姿。

その後ろ姿は父親の暴力から逃げ、隠れているようには見えない。


朱里ちゃんは現在(いま)を楽しんでいる。

今、この瞬間を楽しんでいる。

僕はそれを守りたい。

初めは会長に頼まれたことだった。

でも今は、僕自身が守りたいと思う。


「待ってー!」


僕は朱里ちゃんを追いかけた。


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