わたしの魔法使い
「…――ねえ、ここを上るの?」

「そう。ここを通るとすぐだから。」


僕たちは今、階段の前に立っている。

だけどその階段というのが

「何でこんなに急なの?」


そう。百段以上ある階段は急で、28才の運動不足気味の僕にはかなりきつい。

それに、マンションから結構歩いてきた。

そろそろ僕の体力も限界。
グズグスしている僕に、先を進む朱里ちゃんが振り返る。


「行くよー!」



朱里ちゃんは元気に上がっていく。

毎日ゴン太に鍛えられてるから、歩くスピードも、階段を上ることも平気みたいだ。

「……朱里…ちゃん……もう無理……」

「じゃあ、じゃんけんグリコして上がろう!楽しいから、あっという間に上につくよ!」


こうして28才と24才のじゃんけんグリコが始まった。

「「じゃんけんぽんっ!」」

「勝ったー!ち、よ、こ、れ、い、と!」

「今の!後出しだったでしょ?」

「違うよ!颯太さんと同時だもん!」

「じゃあいいよ!せーの!」

「「じゃんけんぽんっ!」」


勝ったり負けたりを繰り返しながら、僕たちは階段を上がっていく。

ワーワー言い合いながらじゃんけんグリコで階段を上る僕たちに、周囲の視線は冷たい。

でも、楽しい!




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