扉の向こう
「そう言えばさ、さっき会館で先輩と話してたよな?なしたの」
藍那ちゃんに聞かれたのと同じことを聞かれた。
「なんかね同じマンションに住んでるらしい」
「ふーん。じゃあ今度先輩きたら一緒に帰れよ。俺とじゃ嫌だろ?」
嫌だろ?そう言ったのは将之だがどこか寂しげな表情だった。
嫌なわけではないんだけど。
やっぱり、なんか‥‥
「嫌じゃなくてもさ、俺あんまこれないし」
「でも先輩のことあんま知らないから!それにパパにお迎え頼むし」
「あー、そーか。まあいいや」
そのあとはずっと無言だった。
気づけばもう家の前についていて
「じゃあな」
って掴まれていた腕を離されたから。
だから私も
「またね」
って言ってばいばいした。