ハナミズキ



「なにやってんスか?先輩」




「……クソッ…!…なんでもねぇよ!」



先輩はそう言うと、逃げるように去っていった。








バタバタバタ………















「…ふぅ…大丈夫か?恋華」

「あ、ありがとう…氷野くん。

…でも…なんでここに?」


「恋華が気になって……」



「そっか……ありがとう」


助かった………。



「あの先輩、フェミニストなイケメンとして有名だけど、すっげー手ぇ早いヤツなんだと。

なんでも、嫌がる女も無理やりヤっちまうらしい。」


「そう、だったんだ……良かった…。」


「…でも、何で急に?」




「うん……ちゃんとケジメ、つけなきゃって思って…」






だってね?



さっきの氷野くんの言葉で目が覚めたの。

こんなんじゃ、誰も幸せになれない。


やっぱり、私…



氷野くんのこと………

























「悠くん…私とつき合ってくれませんか?
私の進む道には、悠くんが必要なの。

お願い、私の道標になって。」


このとき私は初めて氷野くんを“悠くん”と呼んだ。



一瞬悠くんは、驚いた表情をしたけど、
すぐに嬉しそうな顔を浮かべた。


「うん、ずっと側にいるよ。」


「ありがと……悠くん」


お礼を言うと、悠くんは私を強く抱きしめた。


「わわっ」



「…やっと捕まえた」




そう言う、悠くんの声は心なしか弾んで聞こえた。

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