ハナミズキ



「綾月、先生連れてきた!」



「……なんでぇ?なんで、覚えてないの………?」



「何があったんだ?」



「恋華ちゃんが…綾月のこと覚えてないの…」



「は?そんなはずないだろ!」



「おい、恋華!俺が誰だか分かるか?」



恋華って誰?


私の名前?



「……ごめんなさい…」

私は首を横に振った。

その男の子は、先生と見られる人に向かって

「先生!なんで恋華は覚えてないんですか!?」

と、まくしたてていた。

しかし、その人は冷静に、かつ、的確に答えていた。

「…たぶん、意識を失う前に本人にとって、精神的ダメージを受けたんでしょう。それを思い出したくないから、頭で必死に守ろうとしているんだと思います。この手の記憶喪失はいつ思い出すのか分からないですね。」



「そんな…」



「綾月のせい…!!綾月があんなことしようとしたから…恋華ちゃんは…!いやぁあっ!」



「落ち着け!仕方ないだろ、もうなった後なんだから!これからまた友達になればいい!」



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