マスカケ線に願いを
「どうしたの?」
「杏奈、それ卑怯だから」
「?」
卑怯って、今の私の言葉が?
「照れてるの?」
「照れない男がどこにいるよ」
「そんなものかな?」
そこに注文した料理が運ばれてきた。
「あ、美味しい」
「だろ」
ユズも笑顔で料理に手をつける。
「杏奈は、料理誰かに習ったのか?」
「ううん。家にいたときは作ってなかったよ。勉強も忙しかったし」
「そうなのか?」
私は一人暮らしをするまでは料理をしなかった。お母さんが作るのを手伝うことはあったけど、私が率先して作るということはなかったのだ。
「でも、お母さんが料理上手だったから。舌は鍛えられたよ」
「だからだな」
そんな話をしながら、食事を終わらせる。
本当に美味しい料理だった。
「今度、さっきの味付け挑戦してみよう」
「お、食べさせてくれな」
「成功したらね」
レジで財布を取り出すと、ユズにしかめ面をされる。
「あのな、これくらい払わせろ」
「え、でも」
「いいから」
ちょっと悪い。けど、男としてと年上としての面子ってものもあるだろう。仕方ないから言葉に甘えることにした。
「じゃあ、行くか」
「うん」