マスカケ線に願いを
「どうしたの?」
「いや……」
躊躇うユズが、らしくないと思う。
「気になる」
「あー……」
ユズは顎に手を当てて、小さな声で呟いた。
「キスしたいとか言ったら、杏奈は怒るだろうなって思って」
「…………」
ユズの言葉に、私は赤面した。
恋愛初心者の女の子というわけではないのに。
キスくらい、何度もしたことがあるのに。
相手がユズなせいか、照れてしまう。
でも、嫌じゃ、なかった。
小さくうなずいて、私はユズを見た。
ユズが、すっと真剣な顔になる。そして、そっと私に近づいてきた。
「杏奈、好きだ」
そう言って、私の唇をふさいだ。
ねえ、私の手のマスカケ線。
私は、まだ一人で立っていられてる?
私、この人が、好き。
だけど、一緒にいるのが怖い。
私は、この人とずっと一緒にいられるの?
それとも、この人も私を置いていく?
ねえ、教えてよ、私の手のマスカケ線……。
ユズ、お願いだから、私を揺さぶらないで。
私は、弱くなりたくないの。
傷つきたくなんか、ないの。