マスカケ線に願いを

「あの、ありがとうございました」
「え? 何が?」
「ストーカーのこと、久島弁護士に言ってくれたんですよね」

 私の言葉に、小夜さんはああと声を上げた。

「だって杏奈ちゃんって、自分で何とかしようとするタイプじゃない? でもストーカーって本当に危ないのよ」
「おかげで、ストーカー捕まったんです」
「そうなの! 良かったわね」

 ふふっと笑う小夜さん。

「あの、お礼に奢らせてください」
「え、悪いわよ、そんなの! だって、私、久島弁護士とお話できてすっごいラッキー!って思ったんだもの」

 本当に嬉しそうに言う小夜さんに、私はコウの言葉を思い出した。

「コ……久島弁護士、小夜さんのこと可愛いって言ってましたよ」
「へえ、かわ……」

 はっとした小夜さんが私を見て硬直した。

「小夜さん?」
「っ」

 そして、一気に顔を真っ赤に染めた。

「……可愛いなんて、本当に……?」
「はい」

 真っ赤な顔で話しかける小夜さんは、可愛らしかったって確かにコウは言ってた。
 確かにこうやって顔を染める小夜さんは、可愛い。

「ひ、久島弁護士と話すの、すごく勇気が要ったの。だって、私知り合いじゃないし! でも、良かったぁ」

 えへへと照れたように笑う小夜さん。

「小夜さん、今夜お時間ありますか?」
「ん? あるけど」
「お食事一緒にどうですか? ちょっとだけお酒も交えて」

 私の言葉に、小夜さんは驚いたように、私を見た。

「良いの?」
「はい」
「わあ、嬉しい! だって、杏奈ちゃんって、なんかそういうの苦手そうだから!」

 確かに、人と付き合うのは苦手だ。
 特に私の見た目だけで妬むような人達とは。
 でも、小夜さんとは、仲良くなれそうな気がした。
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