マスカケ線に願いを
「お、もうこんな時間だ。ユズ、上がるぞ」
つられて時計を見た私は、思ったより時間が過ぎていて驚いた。時間を忘れられるほど楽しいひとときだった。
「おう。大河原さん、ここの受付で待ってて。送ってくから」
蓬弁護士の言葉に、私は二度驚く。
「いえ、そんな悪いです」
久島弁護士も真剣な面持ちで、続けた。
「だーめ。待ってろよ。先に帰ったら呪うぞ」
「えっ? 呪うとかやめてください」
蓬弁護士も立ち上がりながら、微笑む。
「俺は呪わないけど、ストーカーしてやる」
「いや、それもやめてほしいです」
「とにかく待ってろ」
しまいには命令だ。
でも、本当に呪われたりストーカーされたりしたら困るので、二人の帰宅準備が終わるまで、私は受付で待つことにした。
困った顔で待ってる私に、同じく帰宅準備を済ませた受付嬢が笑った。
「その様子だと、久島弁護士達に捕まりましたか?」
先ほど話したときは少し淡白な印象を受けた彼女だけど、それは仕事中だからだったらしい。
話しかけられた私は苦笑した。
「見事に二人の漫才師に捕まりました」
「あらあら、それでは頑張ってくださいね。私はお先に失礼します」
頑張ってくださいとか言われちゃった。
「だあれが漫才師なんだよ」
「うわ」
蓬弁護士が笑いながら話しかけてきた。久島弁護士も一緒だ。