マスカケ線に願いを
「わかりました」
小夜さんは目を丸くして、うなずいた。
「それじゃあ」
「あ、お仕事がんばってください」
ユズが上へ向かって、私はそっとため息をついた。
「杏奈ちゃんが蓬弁護士に言い寄られてたのね!」
「噂、本気にしてました?」
私がそう訊ねると、小夜さんは首を横に振った。
「二人が仲いいんじゃないかなっては思ってたけど、杏奈ちゃんが言い寄ってるとか、誘ってるとかそういう風には思ったことないわよ。だって、杏奈ちゃん、そういうタイプには見えないもの」
小夜さんは笑って、そう言ってくれた。
その言葉が、嬉しくて、私は心から微笑んだ。
その顔を見た小夜さんが、笑顔になる。
「杏奈ちゃん、笑ってた方がずっと素敵よ。いつもは、まじめな顔でてきぱき仕事してるから、邪魔しにくくて」
「そう、ですか?」
「杏奈ちゃんは美人でなんでもできる感じだから、羨ましいわ。まさに完璧美女って感じよね」
「そ、そんなことはないですよ、全然……」
そんなに笑顔で素直に賞賛されたら、本当に照れてしまう。
「ふふ、それじゃあ、今晩、一緒にお食事しましょうね」
「はい」
私は笑顔でうなずくと、自分のデスクに向かった。