マスカケ線に願いを

「私のこと嫌いなのは結構ですけど、あることないことあちらこちらで言いふらさないでください。迷惑です」

 ああ、もう。
 これだから、気が強すぎるのは困る。

「……貴女……っ」

 私はそっぽを向いて、個室に入った。

「なんなのあの態度!」
「ちょ、落ち着いて」

 どたばたと二人がお手洗いから出て行った。

「……やっちゃった……」

 私はため息をついた。

 学生時代から、私のことを妬む人が多かった。それこそ陰口を言われたりしていた。
 腹が立って、毎回やってしまうのが、これ。

 面と向かっての宣戦布告。

 気が強すぎるのも難点だ。
 穏便にこっそり過ごしていたかったのに。

 私は右手の平を見つめた。

 まっすぐと横切って、これでもかって存在感を訴えるマスカケ線。
 我が強い人の証。
 自分をしっかりつかめる人の証。

 私がまさにそうだった。

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