マスカケ線に願いを

 揺れる心


「駅まで送ってくださって、ありがとうございます」
「いや、いいよ。こっちは車だしね」
「小夜さん、また明日」

 小夜さんを近くの駅まで送り届ける私達。小夜さんは意味深な瞳を私に向けた。

「これから二人でどっか行っちゃうんですか?」

 その言葉に、運転席のユズは私を見た。

「どっか行っちゃう?」
「明日はまた仕事だよ」
「杏奈はつれないなあ」

 そう言いながら、ユズは笑っている。

「それじゃあ、杏奈ちゃん本当にありがとうね!」
「あ、気をつけて!」

 手を振りながら駅のほうへ歩いていく小夜さんを見送って、ユズは車を発進させた。

「なあ、杏奈」
「うん?」
「俺んち来る?」

 私は目を見張ってユズを見た。

「明日は仕事なのに」
「んー、着替えとか持ってさ」
「……」

 それは、本格的なお泊りだ。

「今度の週末なら」
「え、まじで」

 驚いた様子のユズに、私は笑った。

「驚くくらいなら誘わないでよ」
「いや、嬉しくて」

 私も、本当は一緒にいる時間が嬉しい。
 だけど、こうやって一緒にいるのが当たり前になるのが、怖いんだ。


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