マスカケ線に願いを
「じゃ、帰るか」
連れ立って一階に降りた私達。話によると、久島弁護士はバイクで通勤しているとのことだった。
駐車場まで行って、バイクにまたがった久島弁護士を見て内心感心する。ライオンのような姿がバイクに凄く似合っていた。
そしてこの様子だと、蓬弁護士が私を送ってくれるらしい。
「それじゃあ、ユズ、大河原さんを捕って食うんじゃないぞ」
「お前じゃないから大丈夫だ」
「大河原さん、気をつけてな。付き合ってくれてありがとうな」
そのまま久島弁護士は豪快に去っていった。
「ライオンみたいな人ですね、久島弁護士」
私の言葉に、蓬弁護士が吹き出した。
「ライオンか」
どうやらつぼにはまったらしい。
「さ、俺達も帰ろうか。家はどの辺?」
「あ、いや。駅まででいいですよ」
このままだと家まで送ってくれることになってしまう。
「遠慮しない。俺は車なんだから」
「でも……」
本当に悪い。
遠回りとかだったら、凄く悪い。
「あの、三代にあるマンションです」
「三代? なんだ俺のとこの近くじゃないか」
あ、近いのか……。
「だから遠慮しないで。さ、乗った乗った」
「こ、これ、蓬弁護士の車ですか?」
私はその車を見て、思い切り腰が引ける。
誰だって、有名な高級スポーツカーなんかに乗れって言われたら、しり込みしてしまうと思う。
蓬弁護士はそんな私を見て、苦笑した。