マスカケ線に願いを
「杏奈ちゃん杏奈ちゃんっ」
翌日デスクについた途端、小夜さんが私に話しかけてきた。
「あ、小夜さんおはようございます」
「おはよう! ねえ、杏奈ちゃんの番号教えて」
「?」
「やあねぇ、携帯のよ」
きょとんとした私は、小夜さんに急かされるように携帯を取り出した。
「赤外線」
「あ、はい」
ちょうどデスクにつこうとした金田君が、私達の様子を見て、声を上げた。
「あ、岩山さんずるいですね。大河原さん俺にも教えてくださいよ」
「え」
金田君も携帯を取り出して、私と番号を交換した。
「ありがとうね」
そう言ってさっさと自分の席に戻る小夜さん。半ば呆然と私はそれを見送っていると、携帯が震えた。
確認するとそれは、ユズからのメールだった。
『おはよう。お昼は一緒に食べような!』
私の都合も訊かず、一方的に決めるものだった。
『わかったけど、ユズのお弁当は作ってきてないよ』
『それでも!』
笑って携帯を片付けると、金田君が私を見ていたのに気づいた。
「彼氏ですか?」
「え」
「いや、メールしながら嬉しそうだったので」
顔に出てたかな。
「大河原さんもあんな顔するんですね。良いもの見た」
金田君の言葉に、私は照れてしまう。