マスカケ線に願いを
本当は、一緒にいたい。
うんとうなずいてしまいたい。
だけど、
『杏奈に俺は必要ないだろう』
ユズに、そう言われたら、私はどうすればいいの……?
「おい、幸樹。杏奈困らせるなよ」
むっとした様子で、ユズが言った。
「俺は杏奈のこと待ってる気でいるんだから」
「だけどな、見てるこっちからしたらもどかしいなんてもんじゃないぞ」
コウは少しだけ、私を責めるように口を開いた。
「傍から見てれば、本人達に見えないもんが見える。どう考えたってお前ら好きあってるんだから、さっさとくっついちまえばいいって思うんだよ」
コウの言葉に、私はうつむいた。
確かに、他人からすれば私の迷いなんて些細なことなのかもしれない。
だけど、一歩を踏み出せないのは、私が弱いからじゃなくて、弱くなりたくないから。
「杏奈……」
黙ってお弁当に箸をつける私に、ユズが心配そうな声をかけた。
「人の恋路に口出しなんかしてると、女の人から嫌われますよ」
責められてばかりじゃいられない。私はさらりとコウにそう言った。
「っ」
私の言葉に、コウは真っ赤になった。
「ちょ、それとこれとは話が……」
「私達の心配よりも、ご自分の心配をなさったほうがいいんじゃないですか」
舌を出す勢いで言った私に、コウはうろたえ、ユズは吹き出した。