マスカケ線に願いを

『駄目だな、こうやって話してると、杏奈に会いたくなる』
「……私も」
『え?』

 ユズ、貴方は、私から離れたりしない?

「ユズが私から離れないといいなって、思ってる」
『杏奈……』

 ユズ、私、もうユズに溺れてる。

「ユズ、お泊りに行ったとき、大事な話をするね」
『おう』
「それじゃあ、おやすみ」
『おやすみ』

 私は電話を切った。


 ユズが、杏奈って私を呼ぶ声が好き。
 ユズが、私を子ども扱いするのが好き。
 強引なくらい私を引っ張ってくれるのが好き。
 私を放っておけないって言ってくれるのが好き。

 私は、蓬柚紀が、好き。



「大河原さん、こっちもよろしく!」
「はい」

 先輩達のお酌をする私。幹事だから、飲んではいない。

「佐々木主任、お誕生日おめでとうございます!」

 小夜さんの声が聞こえて、そちらを見てみれば、男の先輩達と小夜さんが佐々木主任にお酌をしていた。

「みんな、わざわざありがとう」

 佐々木主任は嬉しそうで、その笑顔を見て、こうして飲み会を開いて良かったと思える。
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