マスカケ線に願いを
「大河原さん、こっちこっち」
「あ、今行きます」
金田君もお酌に回ってるけど、男の先輩達は私を呼ぶ。
「金田よりは、女の子にお酌してもらいたいもんな」
というのが、理由らしい。
私は苦笑しながら、忙しなくお酌に回る。と、
「美人は大変ね、あっちこっち呼ばれて」
すれ違いさまに小声で嫌味を言われた。私はにっこりと微笑み返した。
「それほどでもありません。大田先輩もお酒どうです?」
負けじと言い返す。
「結構よ」
つんと大田先輩は自分の席に戻った。
そのとき、貸切のはずの二階の座敷に入ってきた一団を見て、会場が騒がしくなった。
その中に、見慣れた姿を見つけて、私も唖然とする。
「あれ、山内君じゃないか」
「佐々木主任、誕生日おめでとう。これは私達からのお祝いだ」
佐々木主任に細長い包みを手渡しているのは、ベテラン弁護士の山内弁護士で、この一団はうちの弁護士達だ。
司法書士達も、特に女の先輩達の席が色めきたった。
「せっかくの飲み会だからな、うちの弁護士達も参加させていただくよ」
山内弁護士の言葉に、小さな歓声が上がる。普段はフロアも違うせいで、なかなか交流の機会がない弁護士と司法書士。ハイエナの彼女達のテンションが上がるのも、無理はない。