マスカケ線に願いを
お風呂にも入って、部屋着に着替えた私達は、ソファに並んで座っていた。
「杏奈」
「うん?」
「可愛い」
ユズの言葉に、私は苦笑する。
「私は可愛いってタイプかな」
「俺からすれば、可愛い子猫ちゃんだけどな」
子猫ちゃん、ね。
「俺が初めて拾った捨て猫だな」
そういえば、そうだった。
凄く堕ちていたときに、ユズに拾われたんだった。
ユズが、私の頬に触れた。
私はその手に触れる。
「ユズの手って、大きいね」
「そりゃあ、男だからな」
私はユズの手をなでる。
「くすぐったい」
「骨ばってる。やっぱり、私の手とは全然違う」
と、私はふと思い出した。
「そういえば、姫君ってなに?」
「へ?」
「木山弁護士に、貴女がユズ君の姫君かって言われたよ」
私の言葉に、ユズはぶっと吹き出した。
「いや、ごめん。それはもっぱら俺のせいなんだけど、弁護士うちで杏奈のことが話題になってさ」
「なんで?」
「幸樹が口を滑らせたんだったかな。それで、俺すっげえからかわれてんの」
私は口を尖らせた。
「ユズがからかわれる分にはいいけど、私までからかわれる羽目になったじゃない」
私の言葉に笑ったユズが、すばやく私の唇にキスをした。