マスカケ線に願いを
「何人かと付き合ったけど、皆同じ事を言って別れを告げるの。向こうから、私に言い寄ってきたくせに」
向こうから近づいてきたくせに、私が少し心を許したとたんに、飽きて離れていった男達。
知らず、ユズの手を握る私の手に力が入っていた。
「杏奈は、俺なしでも生きていけるだろって……皆、口をそろえて言うの」
「杏奈……」
「私は、ユズが同じことを言って、私から離れていくのが怖い」
ずっと、頭から焼きついて離れない。
ユズはいつか私に同じ言葉を吐いて離れていくって。
それは、一種の脅迫概念みたいなもの。
「ユズと一緒にいて、一緒にいることに慣れるのが怖いの。弱くなることが……怖い」
それでも、私はユズに毒されてる。
ユズに、溺れかけている。
お願いだから、この揺れる想いを、どうにかして――……。
「杏奈は俺なしでも生きていけるだろ」
「っ」
ユズの言葉に、私は息を飲んだ。
しかし、ユズはその顔に笑みを浮かべた。
「そんなの最初からわかりきってる。杏奈に俺は必要ない」
「ユ……ズ……」
ユズは私の頭をなでる。
「でもな、いいこと教えてやる」
そして、悪戯を企む子供のように、
「俺には杏奈が必要だぞ」
私の心を射止める言葉を告げた。