マスカケ線に願いを


 涙が出そうになった。

 そう、今までの男達は所詮、彼らに私が必要なかったから、離れていったんだ。
 私に彼らが必要ないって、私のせいにして、私の心を傷つけていった。

 ユズは、そんな彼らとは、本当に違う?
 ユズを、信じてもいい?

「でも、私にユズは必要ないんでしょ?」

 それなら、一緒にいる意味はないって思わない?

 ユズは笑って、

「杏奈に俺が必要なくても、俺は杏奈を放してやらない」

 止めを刺す。

 泣き出しそうになった顔は、ユズに抱きしめられたから見られずにすんだ。

「ユズ」
「ん?」
「私、ユズが好き」


 ねえ、私のマスカケ線。

 ユズと一緒にいたら、私は私のままでいられる気がするの。
 強くあれるような気がするの。

 だから、この人と一緒にいてもいい?


「ユズと、一緒にいたっ……」

 私の言葉は、ユズに塞がれて続きを紡げなかった。

 燃えるような、情熱的なキス。
 一瞬のような、永遠のような、そんなキス。

「……やべぇ、俺、冗談抜きで杏奈なしじゃ生きていけない気がする」
「私はユズなしでも生きていけるよ」
「わかってる。だから、意地でも放してやらない」
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