マスカケ線に願いを
第四条 素直になるべからず
杏奈とユズ
「結局くっついたのか。なんか随分遠回りしてたようだけど」
屋上での昼食の席で、コウにからかうように言われる。
「仕方ないでしょう。私には思うところがあったんですから」
私の言葉に、コウは目を見張った。
「あれ、なんか杏奈ちゃん、前より強くなってない?」
「気のせいですよ」
私は笑うけれど、コウの言葉に思い当たる節はあった。
ユズを受け入れる前、私は揺れに揺れていた。そのせいで少し弱くなっていたのも事実だ。
今は、少しだけ自分に素直になった。
ユズと付き合うことで、私の心は落ち着いた。
「杏奈、明日はから揚げ入れてくれ」
「うん、わかった」
当のユズはといえば、私が作ったお弁当を食べている。隣に座って、実は私は幸せをかみ締めているところだ。
からかわれるのがわかっているから、顔には出したくないけれど、本当はこうやってユズと一緒にいられるのが嬉しいし、幸せ。
「いいなあ、愛妻弁当」
「妻じゃないですけどね」
ばっさりと切り捨てる私に、コウはショックを受けたような顔をする。
「おい、ユズ、杏奈ちゃん、レベルアップしてないか?」
「杏奈の気が強いことくらいお前も知ってるだろ」
笑いながら言うユズは、私のことをきちんと理解してくれている。