マスカケ線に願いを
「俺は案外二人でもいけると思ってる、杏奈となら」
「そうかな?」
ユズの笑顔に、私は癒される。
こんな日々がいつまでも続けばいいのに。
「杏奈といると、まじで結婚とか考えたくなる」
「ちょっと、付き合い始めたばっかりでそれはないでしょう」
まだ早すぎると私は笑い飛ばすけれど、ユズは真剣な顔だった。
「杏奈がその気になるまで一生ついてくから覚悟しろ」
どきっ
そうやって、私の心を鷲つかみにする。
にやっと笑ったユズが、私の唇にキスを落とした。
「杏奈は、本当に可愛い」
「ありがとう」
麻婆茄子を炒めながら、ユズのために家事をする幸せみたいなことを考えて、心の奥底で結婚も良いかもしれないと思い始めている私がいた。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、前俺が作ったときと味が違う気がしたから」
あ、ユズ気づいた。
「まずい?」
「んなわけないだろ。すっげぇ美味い」
私は嬉しくて微笑む。
「ちょっとだけ味いじってみた」
「さすが杏奈、一生ついていく」
「ユズは一生私のストーカーするつもり?」
「そのつもり」
笑いながら囲む食卓が、本当に幸せなものだと思えた。