マスカケ線に願いを

「杏奈も、もうちょっと甘えてくれても良いんだぞ」
「私のキャラじゃないってことくらいわかってるくせに」

 ユズの言葉に、私は苦笑した。

「そりゃあわかってるけど……ちょっとくらいいちゃいちゃさせろ」
「いちゃいちゃって……」

 ユズの目の色が、変わった。
 突如変わったユズの雰囲気に、どきりとする。

「今日、泊まってく?」
「え……」

 空になったお茶碗と箸を置いて、ユズがにやりと笑った。

「せっかく、杏奈用の服とかこっちにそろえてあるんだからさ」
「あ、明日も仕事だよ」
「固いこと言うなって。なんもしないから」

 ユズはにやにや笑って、私の反応を見ている。

「杏奈がしてほしいなら、期待には応えるけどな」
「馬鹿っ」

 真っ赤になる私に、ユズが手を伸ばした。

「ほんと、可愛い」
「っ」

 身を乗り出してきたユズに、私は慌てて立ち上がった。

「片付けするから、手伝ってっ」

 空振りをくらったユズは不敵に笑った。

「片付け終わったら、のんびりできるもんな」
「もうっ」

 なにやら含んでいるけど、かまっていられない。
 最近ユズの扱いをわかってきた。
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