マスカケ線に願いを
「おいおい、お前らだけで盛り上がってんなよ」
他の男が私達に加わってきた。
今の私達の会話のどこが、盛り上がっているように見えたのか。
沙理菜が心配そうに私を横目で見て、笑顔、と口ぱくをした。
不本意ながら、私は作り笑いを浮かべた。
こんなとき、自分の理性が嫌いになる。
本当は我慢なんかしないで席を立てばいいのに、沙理菜のためと思うとそれができない。
なにより、いやいやながらも合コンに参加することを承諾したのだから、それをきちんと終わらせたいと思ってしまう。
頼まれたからには、ちゃんとやらないと気がすまないから。
楽しくもない会話に調子を合わせ、適当に相槌を打つ。
「杏奈さんは、しっかりしてる感じだよね」
「よく言われます」
しばらく後、男が突然そんなことを言い出した。
「しっかりしてる女の人って素敵だよね」
うんざりしていたところに、そんな心にもないことを言われ、いらっとする。
「そうですか? 男の人は、自分がしっかりしてたいって思うものでしょう? しっかりした女なんて、邪険に扱われるだけですよ」
「はは、そんなことはないだろう」
口では否定しながらも、男の目は泳いでる。私の言葉は図星をついたようだ。
何が悲しくて、こんな小者を相手にしなくてはいけないのだろうか。
私が求める何かを持っている男は、少ない。
理想が高いのとは少し違う。
私を包み込めるだけの包容力を持つ男が少ないだけ。