マスカケ線に願いを
そうしているうちにお昼休みになった。コウから、屋上で待っているというメールが届いたので、私は小夜さんと一緒に屋上に向かう。
「屋上なんて、初めて」
「ですよね。私も久島弁護士に教えてもらうまで、知りませんでした」
そんなことを話しながら屋上に行くと、コウがベンチで寝そべっていた。私達はコウに近づく。
「そんなところで寝転がってると、スーツが汚れますよ」
「おーう」
コウが笑って姿勢を正した。
「やあ、岩山さん」
「こ、こんにちは」
どもりながら、小夜さんが頭を下げる。そんな様子にコウは笑った。
「そんなに固くならないで」
「そうですよ、小夜さん」
私が意味ありげに小夜さんを見ると、小夜さんの頬がほんのり赤く染まる。
「そ、そういえば杏奈ちゃん、蓬弁護士はどうしたの?」
「え」
小夜さんの問いに、私は言葉に詰まった。
「ユズは絶賛浮気中」
「え?」
「っ……」
コウの言葉に、私ははっとする。小夜さんが私を見た。
「浮気って……」
「コウ……」
私はたしなめるようにコウを見た。コウは年甲斐も無く舌を出した。
「ユズは元カノの離婚調停につきっきり。相談とかもされてるらしいし。今日だって昼も一緒なんだろ?」
最後は私への問いかけだった。私はうなずく。