マスカケ線に願いを


 食事のあと、コウと三階で別れて、小夜さんと二階に戻る途中、小夜さんがため息をついた。

「小夜さん?」
「え、あ……」

 小夜さんは見るからにしょんぼりとしていた。

「どうしたんですか?」
「うん……杏奈ちゃんにこんなことを言うのは、あれかもしれないけど……久島弁護士は、杏奈ちゃんのことが好きなのかな」
「えっ!?」

 小夜さんの言葉に、私は驚いた。

「だって、蓬弁護士がいないとき、いつも杏奈ちゃんに声をかけてるし……さっきのだって」

 随分落ち込んでしまっている小夜さん。ここは誤解を解かなくてはいけない。

「久島弁護士の秘密を教えてあげます」
「え?」
「久島弁護士は、シスコンなんです」

 私の言葉に、小夜さんはぽかんと私を見た。

「だから、妹さんと同じくらいの年の私のこと、気にしてばっかりいるんですよ」
「妹?」
「はい。だから、小夜さん、諦めちゃ駄目ですよ。応援してますから」

 私の言葉に、小夜さんは真っ赤になった。

「お、応援って!」
「あれ、小夜さんは久島弁護士のこと……」
「わあっ、しーっ」

 慌てて人差し指を口元に当てる小夜さん。

「やっぱり」
「……もう、杏奈ちゃんには敵わない」

 小夜さんは真っ赤になりながらため息をついた。
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