マスカケ線に願いを
「大学卒業して、俺は凄く忙しくなった。大学時代と違って、小町と頻繁に会うこともできなくなった。小町はそれに耐えられるような性格じゃなかったんだよ。きっと寂しかったんだろうな」
「…………」
私はそう、とうなずいた。
「それで、一緒に行くか?」
ユズが再度訊ねるけれど、私は首を横に振った。
「せっかくの旧交を邪魔するわけには行かないから。ユズは小町さんのこと慰めてあげてよ」
「……わかった」
私って、本当に可愛くない。
その夜は、ユズが私をしっかりと抱きしめて放さなかった。
翌日、ユズは小町さんに会いに出かけた。
ユズの部屋で、ぼんやりと一人で過ごす。
一人になりたくないと感じた私はふと気づく。
「……堕ちてる」
心が、どんよりと重くなっている。ユズと付き合い始めてから高揚した心。それが、今は沈んでいる。
原因はわかってる。ユズが今ここにいないせいだ。
「馬鹿みたい……」
本当は素直にユズについていけばよかったのに。
私の頑固な性格が、憎たらしい。
「……ユズ……」
一人になりたくない。
置いていかないで。
私はソファに丸まって、じっと時間が過ぎるのを待った。