マスカケ線に願いを



 楽しくもなかった合コンはお開き。
 帰ろうとした女の子達を、男達は送ると言う。社交辞令か、私も声をかけられた。

「送っていくよ」
「いえ、結構です」

 私はいつも、それを断る。
 それに、男達は困った顔をする。

「でも、やっぱり危ないですよ」
「結構です」
「じゃあ……気をつけてくださいよ?」

 最初は食い下がる男達も、すぐに諦める。もとより私なら一人でも大丈夫だと思われるらしい。

 以前男友達にこう言われた。

『杏奈はさ、高嶺の花っていうか、手出しできない雰囲気があるよな』

 しっかりしているから、自分なんか必要ないと感じる、と。人の助けなんて必要なさそうだ、と。
 そしてそれは、いつも私が恋人と別れるときに使われる言葉だった。

『杏奈は俺がいなくても大丈夫だろ』

 しっかりしすぎているのも、損だと思う。


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