マスカケ線に願いを
「?」
「初めまして」
不思議に思った私が口を出す前に、小夜さんは笑顔で木山弁護士にそう返した。
「うん、それじゃあ、私もお昼を食べに行ってくるわ。またね」
「はい」
降りていく木山弁護士を見送った小夜さんが、そっとため息をついた。
「どうしたんですか?」
「え、ああ……あんな綺麗な人と一緒に仕事してたら、男の人だったら惚れちゃうだろうなって思って……」
小夜さんの言葉に、私は納得がいった。
「恋って、いいですね」
からかいを含んだ笑みで、私はお返しをした。
私の言葉に、案の定小夜さんは真っ赤になる。
「あ、杏奈ちゃんったら……やだっ」
「ふふ」
そんな小夜さんが可愛らしくて仕方ない。
小夜さんが私から桃色のオーラが出てると言っていたけど、私も他の人から見たらこんな感じなのだろうか。
そんなことが、ふと気になった。
「よっ、杏奈ちゃん、岩山さん」
屋上へ向かう階段を上がってる途中、後ろからぽんと背中を叩かれた。
「あ、久島弁護士」
コウが、笑顔で私達を見ていた。その隣にはユズも一緒だ。
「今日は岩山さんも一緒なんだな」
「うん、せっかくだから」
ユズの言葉に、私はうなずいた。小夜さんが一緒だということを、ユズ達には伝えていなかったからだ。
屋上のベンチに陣取りながら、私達は各々お弁当を広げる。ユズと私のお弁当は、同じメニューだ。
「そうだ、二人とも、小夜さんも下の名前で呼んだらどう?」
「ん、小夜ちゃんって?」
コウが口にした瞬間、小夜さんの顔が真っ赤になる。それを見たコウが笑った。