マスカケ線に願いを
恋の架橋
狭いベッドで寝転がりながら、私はユズに話しかけた。
「ねえ、コウって、好きな人とかいないの?」
私の言葉に、ユズが明らかに不機嫌になって、私を抱きしめる力を強めた。
「お前な、俺の腕の中で他の男のこと聞くって、どういう了見だよ」
ちょっと苦しくなって、私は身じろぐ。
「ごめんなさい。でもね、小夜さんがコウのこと好きみたいだから」
「小夜さんが?」
ユズが眼を丸くする。
「趣味が悪いにもほどがあるぞ」
「何言ってるの。ユズやコウに惹かれない女の人はいないわよ」
私がそう言って笑うと、ユズが眉間にしわを寄せた。
「んっ」
そして、いきなり私の口を塞ぐ。どんどんと深くなるキスに、私の身体から力が抜けてしまう。
「……あんまり、嫉妬させてくれるな」
「本当のこと言っただけでしょう」
真っ赤になりながら言う私の頬を、ユズがなでる。
「で、幸樹に好きな人?」
「うん」
「なんだ、杏奈も意外におせっかいなんだな」
確かに、人の恋路に口を挟んだり、興味を持ったことは今までなかった。だけど、今回はちょっと違う。
「せっかく仲良くなってくれた、二人だから」
私はそう言って、ユズに擦り寄った。
私はこんな性格だから、仲の良い友達も少ない。つるむだけの友達ならいらないと思うし、上辺だけの友達なんてもっと要らない。
それだから一人でいることが多かった私だけど、信頼の置ける友達だっていることにはいる。
そんな私にとって、小夜さんやコウは仲の良い友達といえる人達なのだ。