マスカケ線に願いを
それから、四人で食事をする機会が増えた。私はユズと話すことが多いので、自然と小夜さんとコウが話をする。
ユズの話では、コウには特定の女の人はいないらしい。それならば、言葉はおかしいけど、小夜さんにも勝機があった。
「それで、小夜さん、コウとは何か進展とかありました?」
「え」
仕事が終わって、私が小夜さんに話しかけると、小夜さんは驚いたような顔をした。
「し、進展も何も……」
「でも、連絡先を交換してましたよね?」
私の言葉に、小夜さんはしゅんとしてしまう。
「確かに交換したけど……連絡は取り合ってないよ」
私は顔をしかめる。
「小夜さん」
「何?」
「コウは、今特定の女の人はいないみたいなんです」
私がそう言うと、小夜さんは真剣な顔になった。
「だから、小夜さんにチャンスがあると思うんです」
「チャンスって……」
荷物をまとめた小夜さんが立ち上がったので、私も彼女と一緒に歩き出す。
「でも、恥ずかしいよ」
事務所を出たところで、ユズが待っていた。いつもと違うのはコウもバイクにまたがって一緒に待っていたということ。
「なあ、小夜さんって家どっち方面?」
「え、私ですか?」
突然、ユズが小夜さんにそんなことを聞いたので、小夜さんは驚いたようだった。