マスカケ線に願いを
「えっと、新松に住んでます」
「え、まじで?」
小夜さんの答えに意外そうな声を出したのは、コウだった。
「なんだ、同じだったのか」
「えっ? 久島弁護士も新松なんですか?」
「ああ、実家からなんだけどな」
小夜さんは頬を赤くして、そうなんだ、と呟いている。そこにユズの笑い声が混ざった。
「なあ、せっかくだから、幸樹に送ってもらったら?」
「えええ?」
「ん、小夜ちゃんがバイクでも良いって言うなら、乗せるけど?」
コウが、にっこりと小夜さんに笑いかける。それに、小夜さんが真っ赤になった。
「で、でも……」
「せっかくだから、ご一緒したらどうです?」
私もそんな小夜さんの背中を押す。しばらく躊躇っていた小夜さんは、小さくうなずいた。
「じゃあ」
バイクにまたがったコウが、小夜さんに向かって左手を差し出した。
「乗れる?」
「あ、はい」
差し出された手を握って、小夜さんがコウの後ろにまたがった。コウはヘルメットを小夜さんに渡して、かぶるように言う。
「じゃあ、しっかりつかまってて」
「……はい」
小さい声でうなずいた小夜さんを見て、コウが私達を振り返った。
「それじゃあ、俺達は行くな」
「おう、安全運転でな」
ユズがからかうように言うと、コウは笑った。