マスカケ線に願いを
「杏奈ちゃんは、小夜ちゃんの気持ち知ってるんだろう?」
「え?」
意外な言葉に、私は目を丸くする。
「俺の自惚れじゃなければ、小夜ちゃんは俺のこと好きなんだろ?」
「……気づいてるんですか?」
「あれだけ顔に出てたらな」
コウはくすくす笑う。そして、ふうと息をついた。
「でも、良いかもしれないな」
「え?」
「一人も寂しいと感じてることだし、小夜ちゃんに眼を向けてみるか」
二人をくっつけたかった私だけど、この言葉は少し引っかかった。
「……それって、寂しさを紛らわすためだけですか?」
コウが私を見た。
「うん?」
「コウの寂しさを紛らわせるだけとか、そんな理由なら、小夜さんに近づかないでください」
「……杏奈ちゃん」
これだけははっきりとしなくちゃいけない。私は小夜さんをコウの慰みの道具に使って欲しくないんだ。
「杏奈ちゃんは、本当に真っ直ぐなんだな」
「話をそらさないでください」
「そうやって、自分の意志がはっきりしてる人って、少ないと思う。そしてそれを伝えられる人も」
「コウ」
私は眉をひそめた。だけどコウは首を横に振った。
「俺も、小夜ちゃんが可愛いと思ってるよ。慰みの道具にしようなんて思ってない。あんな素直で可愛い子、なかなか会えないんじゃないかと思ってる」
「……本当に?」
「ああ。それに杏奈ちゃんは知らないかもしれないけど」
コウは照れたように笑って、頬をかいた。