マスカケ線に願いを

 甘い日々



 小夜さんから、コウに付き合って欲しいと言われたと教えてもらったのは、二人が一緒に飲みに行ってから一ヶ月ほど過ぎた頃だった。

「で、結局一緒になったのか」
「うん、そうみたい」

 ユズのベッドに一緒に寝転がって、私はユズの方に身体を向けた。

「今度奢ってもらわなきゃな」
「え、なんで?」

 私はユズの言葉に、首をかしげた。するとユズはにやりと笑う。

「だって、俺達がくっつけたようなもんだろうが」

 そんなユズの言い分に、私は微笑んでユズの頬に触れた。

「そんながめついたこと言っちゃ駄目」
「杏奈は優しいな。取れるとこから取るのが弁護士の性分なのかもな」

 私はユズの首に手を回す。こうしてくっついているのが心地よくて、離れがたい。そうやってくっついているうちに、ユズも私を抱きしめてくれるし、なでてくれる。

「……杏奈」

 そうやって甘い声で呼ばれるのはキスの合図。私は身を乗り出して、ユズの口をついばんだ。
 その瞬間ユズに主導権を握られる。

「んっ……」

 そんな時間が、至福の時だった。



「おっはよーっ!」

 ばしっ

「きゃっ……おはようございます」

 思い切り叩かれた背中をさすりながら、私は朝から機嫌の良い小夜さんに挨拶をした。
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