マスカケ線に願いを
「ユズが杏奈ちゃんを嫌うことなんてありえないから安心して」
「でも……」
ユズが好きになってくれたのは、しっかり者の私。しっかりしていて、どこか放っておけないらしい私。
ユズにべったりで、甘えん坊の私なんかじゃない。
「でも、杏奈ちゃんが距離を置きたいとちゃんとユズに言えば、ユズはわかってくれるだろう」
「……そうだと思います」
ユズは、私の頼みを聞き入れてくれるだろう。だけど、やはり何かが不安だった。
「大丈夫。付き合ってれば、不安があるのは当たり前なんだから。今を乗り越えられれば、杏奈ちゃんはもっと強くなれるだろう?」
コウの言葉に、私はそうありたいと思って、うなずいた。
「でも、ユズはどう思ってるんでしょうか……」
「どうって?」
「私のこと」
コウはふっと笑う。
「そりゃあもう、大好きに決まってるだろう」
「そういうことじゃなくて……一緒に暮らすなんて、なかなか決められることじゃないですよね」
一緒に暮らす、そう考えると、私はやはり結婚を考えてしまう。
「まあ、杏奈ちゃんはまだ若いからぴんとこないかもしれないけど、俺らの年になると、やっぱり結婚とか考えるよな」
「結婚……」
「ユズも、杏奈ちゃんくらいしっかりしてたら大丈夫だと思ったんじゃないかな」
結婚したら、それこそユズと一緒にいられる。でも、それにはやっぱり、私がきちんと自分を取り戻してからじゃないといけない。