マスカケ線に願いを
「こんなところじゃなんだから、店の方に行こう!」
「ところで、今日は誰が集まってるの?」
美鈴に促されて、私達は歩き出した。そして誰が集まったのか気になった私はすぐにそう訊ねる。
そんな私に、美鈴と貴子は意味深な視線を向けた。
「高島君も来てるよ」
「え?」
その名前を聞いた瞬間、私は戸惑った。
「あれ、その反応はないんじゃない? 杏奈達、両思いだったんでしょ?」
貴子の言葉に、私は曖昧に笑って言葉を濁した。私に代わって反応したのは美鈴だった。
「違うよ、貴子。あの時杏奈は日向先輩と付き合ってたじゃん。高島君が杏奈に惚れてたんだよ」
「あれ、そうだっけ?」
二人の間で交わされる高校時代の話に、私は内心穏やかではなかった。
美鈴と貴子、そして私は高校二年のとき同じクラスだった。当時私は日向先輩に告白されて付き合っていたわけだけど、同じクラスの高島尚樹が私のことを好きだったらしい。
わかりやすく私にアプローチをしていたので、クラスでもしょっちゅう冷やかされたのだ。
「ところで杏奈、今彼氏は?」
「え、いるけど」
「あら、高島君残念ね!」
貴子の言葉に、私は苦笑する。
「あのね、高島君が私のことを好きだったって言うのは高校のときでしょう?」
「今も好きかもしれないよ? 高島君、私に杏奈呼べないかって訊いてきたし」
美鈴がおっとりと口を挟んだ。通りかかったレストランの前で美鈴があっと声を上げた。
「あ、二人とも、ここだよ」
「へえ、綺麗な店じゃない」
貴子が感心したように店の外観を見て、私もうなずいた。